公正証書のはなし

相続

不動産の借地契約や売買契約、数は少ないですが賃貸事務所の賃貸借契約において、物件によっては公正証書による契約を結ぶ場合があります。

私文書である一般的な契約書と違い、公正証書は公的な文書という印象はありますが、具体的にどういった性格のものか知らない方も多いかと思います。

公正証書は不動産契約の他、様々な場面で使われます。

公正証書とは何か

公正証書とは契約の成立や一定の事実等の事柄について、公証人が書証として作成し、その内容を証明する書類です。作成にあたっては公証人法という法律で、厳格に定められています。

公証人とは?

公正事務を担う公務員。全国各都道府県にある公証役場で執務しています。

原則として判事や検事などを長年務め、法律事務の経験が豊かで公募に応じた者の中から法務大臣によって任命されます。

公証人は全国で約500人、公証役場は全国に約300か所あります。公証役場は各都道府県に1つは置かれていますが、都市部には多くあります。公証役場は法務省に属し、各都道府県の法務局の管轄のため、区市町村にある役所とは異なります。

公正証書で作成する書類

下記のような場合によく使われます。

例1:公正証書遺言

…民法第967条で定められている、普通方式の遺言3種類のうちの一つ。

証人2人以上の立会、内容の口授等、作成方法も定められています。

例2:離婚に関する取り決め(離婚給付等契約公正証書)

…離婚にあたって子供の養育費や面会についてや、夫婦間の財産分与、慰謝料等の取り決めを公正証書にしたものです。

契約によっては、公正証書での契約締結が必須とされているものもあります。

  • 事業用定期借地権の設定契約書 (借地借家法第23条3項)
  • 任意後見契約の契約書(任意後見契約に関する法律第3条)
  • マンションの管理規約(区分所有法第30条・32条)

また2020年4月の民法改正では、事業融資を受ける際に保証人になろうとする者の意思確認として、新たな規定が創設されました。

保証意思宣明公正証書

事業融資の保証契約について、公証人があらかじめ保証人になろうとするものから直接その保証意思を確認して公正証書を作成しなければ効力を生じないとする規定。

契約についてだけでなく、公証人が直接見聞きしてわかった事実に基づいて作成した公正証書もあります。(事実実験公正証書) 

裁判において高い証明力を有することから、トラブルを防ぐために又はトラブルが起きた際の証拠として、いろいろな事案に使われます。

公正証書のメリット

  • 一般的な契約書ではなく、なぜ公正証書で作成するのか。
  • 公正証書には次のようなメリットがあります。

・証明力が高い

…公正な立場の第三者である公証人がその権限に基づいて作成した文書が公正証書です。その為、その書類は作成者の意思に基づくものである、また真正であると強く推測できます。(これを形式的証明力と言います)公証人法に厳格に従って作成されるので、後々裁判などでその内容が否認されたり、無効となることはほとんどありません

執行力を付けることができる

…金銭債務等の公正証書の場合、強制執行に関する取り決めをし記載しておくことで、催告をした後、直ちに強制執行の申し立てを行うことができます。*強制執行を行うためには裁判所に訴えを提起し、請求を容認する判決が言い渡され、確定される必要があります。これは精神的な負担ももちろん、時間も費用も掛かり、訴訟係争中に相手が破産するなどして執行そのものもできなくなることもあります。公正証書の持つ執行力は権利の保全と迅速な実現のために強い威力を有します。

・安全性が高い

…原本が公証役場で保管されるので保管期間は基本として20年*例外もあります、第三者によって改竄することができず、万一破損、紛失した場合でも再交付が可能です。

どのように作成するか

1.事前準備

内容を決める:どのような文書を作成するのか。文章の内容(契約する事項、各条件の具体的な定め方)を当事者間でよく話し合って決めておきます。

行政書士やその他第三者に文案の作成を依頼する場合でも、事前に十分に打ち合わせをし、しっかりと内容を固めておくことが大切です。*不動産関係の公正証書などは我々のような不動産業者でも依頼を受けています

資料の準備:当事者が公正証書を作成する場合

当事者が個人
  1. 印鑑証明書と実印
  2. 運転免許証と認め印
  3. マイナンバーカードと認め印
  4. 住民基本台帳カードと認め印
  5. パスポート、身体障碍者手帳又は在留カードと認め印

1~5のいずれか

当事者が法人
  1. 代表者の資格証明書と代表社印及びその印鑑証明書
  2. 法人の登記簿謄本と代表社印及びその印鑑証明書

1、2のいずれか

代理人に依頼して作成する場合

当事者が個人
  • 委任状
  • 当事者の印鑑証明書
  • 代理人の身分証明書(上記当事者が個人の場合の身分証明書の1~5のうちのいずれか)
当事者が法人
  • 法人の代表者から代理人への委任状
  • 法人の確認資料(上記の確認資料の1、2のいずれか)
  • 代理人の身分証明書(左に同じ)

*印鑑証明書や謄本等各証明書は発行後3カ月以内のものに限ります(以前は6カ月以内でしたが、2005年に変更なりました)

2.公証役場へ申し込む

利用を希望する公証役場へ公正証書の作成を申し込みます。

3.担当の公証人(又は事務員)に作成したい公正証書の内容を伝える

内容によっては関係書類を事前に提出しておくこともあります。

4.公証人が内容に応じて書面を作成する
5.公正証書案を確認する

平均で2週間程度地域や時期、内容によってはもっと長くかかることも多々ありますで公証役場から連絡が来るので、公正証書の内容を確認します。

問題が無ければこれで内容が固まります。

6.当事者、公証人の予定を合わせて、公正証書作成日時を決める

作成日当日には身分証や印鑑など作成に必要なものを全て持参のうえ、公正証書を作成します。

*遺言の場合は、被相続人の生まれてからの全ての戸籍謄本等、不動産の場合には土地又は建物の登記簿謄本等必要なものは作成する公正証書によって変わります

7.完成!!

手数料を収めて完成です。公正証書の原本は公証役場に保管され、当事者は正本(又は謄本)を受け取ります。

手数料は公証人手数料令で定められており、全国どこの公証役場でも同じ金額です。

詳しくは下記のHPをご覧ください

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