民法改正のはなし~所有者不明土地のはなし②~

不動産投資

2021年4月21日、参議院で「民法等の一部を改正する法律」と新法「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」相続土地国庫帰属法)が可決成立し、同月28日に交付されました。

法律の成立によって、難問化していた所有者不明土地問題の解決に向けて道筋が示され、今既に所有者不明となっている土地を円滑・適正に活用する為、今後所有者不明土地を発生させない為の両面から民法や不動産登記法の見直しや仕組みづくりが行われることになります。

施行日はまだ未定ですが、原則として2年以内の政令で定める日とされています。

相続登記の申請の義務化は公布後3年住所変更登記の申請の義務化等については、公布後5年以内の政令で定める日とされています

改正のポイント

改正のポイントは2つ。発生予防利用の円滑化

上図2つのポイントのうち、今回は左側の所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組みについてお話しています。

*そもそも所有者不明土地とは何か以前のブログでお話しています。良かったらご覧になってください↓

所有者不明土地を活用するための変更点

1.土地・建物の管理制度の創設

土地所有者の所在の手掛かりが全くつかめないような場合、利害関係人からの請求により、裁判所が所有者不明土地の管理人を選任することで、土地の管理を命ずることが出来る制度。(改正民法第264条の2以下)

*またほぼ同様の制度が所有者不明の建物についても設けられることになりました(改正民法第264条の8

2.管理不全土地・建物の管理制度の創設

所有者による土地の管理が不適当で他人の権利や、法律上保護されるべき権利が侵害されたり、その恐れがあるような場合、利害関係人からの申請により、裁判所がその土地・建物の管理人を選任し、管理を命ずることが出来る制度の創設。(改正民法264条の9以下(土地)改正民法第264条14(建物))

*いわゆるゴミ屋敷等が対象になるのではないか、という意見があります

2.共有物の管理、変更

所有者不明土地問題の中でも重要視されているのが、相続時による所有権移転登記が未完了のまま何代も経った結果、極めて多数の共有者が存在する土地等についてです。

共有とは

複数人で所有権を共同して持合い、対象となっているものを利用していく権利。それぞれが持つ権利の割合(共有持分)に応じて利用することが出来ます。

共有物はそれぞれの持分所有者が単独で行えることと、他の持分所有者の同意が必要なことの二通りがあります。

単独で出来ること

保存・使用行為

  • 共有不動産などで壊れた設備の修繕といった、現状を維持するような修繕・リフォーム
  • 共有不動産を使用すること
  • 自分の所有する持分のみを売却すること
同意が必要なこと

管理行為各共有者の持分の価格の過半数の同意が必要

  • 賃貸物件として短期間使用すること
  • 資産価値を高めるようなリフォームをすること

変更行為共有者全員の同意が必要

  • 建物の解体
  • 賃貸物件として長期間使用する
  • 不動産を売却する

改正された民法では、所在が不明な共有者、催告をしても賛否を明らかにしない共有者がいた場合、それらの共有者を除いた共有者の同意(又は持分の過半数の同意)を得て裁判を行い、管理、変更行為ができるようになります。(改正民法第252条2以下)

また、共有物の管理者を設置し、一定の管理業務を行うことが出来るようになります。(改正民法第252条、第252条の2)

・所在地等不明共有者の持分の取得

裁判を行い、所在不明者分の持分相当額を供託することで、不明者の持分を取得することが出来るような仕組みの創設改正民法第262条の2第1項

3.隣地等の利用・管理の円滑化

主な改正点は3つ。1.隣地使用権 2.竹木の枝の切除等 3.ライフラインの設備設置権になります。

1.隣地使用権(改正民法209条1~4)

現状では「境界線又はその付近での障壁、建物等の築造・修繕に必要な範囲内で立入を請求できる」だったのが

  • 境界又はその付近における障壁、建物等の築造・撤去又は修繕
  • 境界線の調査又は境界に関する測量
  • 枝の切取り

上記の3項目に増え、隣地への立入の請求ができるだったところ、必要な範囲内で隣地を使用できるよう変更になります。*相手の承諾が無くても使用できますが、隣地の所有者・使用者に最も損害の少ない目的、日時、場所及び方法を選び、その旨をあらかじめ通知する必要があります(通知が困難な際には使用を開始した後に遅滞なく通知します)

2.竹木の枝の切除(改正民法第233条3項)

隣地の竹木の枝が伸びて自分の土地に入り込んでしまうことがあります。隣地の所有者に対応してもらえるならば良いのですが、所有者が不明な土地等の場合、現行法では対応が困難になります。

改正法では原則として現在のルールを維持しつつ、土地の所有者が自ら切り取ることが出来よう以下のようにルールが明確になります。

  1. 竹木の所有者に切除するよう催告したにもかかわらず、相当期間内に切除しないとき
  2. 竹木の所有者が不明で、所在もわからないとき
  3. 緊迫の事情があるとき

*切除にあたって、必要な範囲内であれば、上記1の土地使用権と同様に隣地を使用することが出来ます

3.設備使用権(改正民法第213条21項)

電気・ガス・水道などのライフラインについて、設備を他の土地に設置しなければ供給を受けることが出来ないときには、必要な範囲で他の土地に設備を設置する、又は他人が所有する設備を使用することができるようになります。

今回の改正で、既にある所有者不明土地、管理が不十分な土地に対する制度として、所有者不明土地の管理に特化した新制度「所有者不明土地管理制度」が創設されます。この制度によって、一定の保存、利用行為を行うことができ、裁判所の許可を得ることで売却なども行えるようになるとみられています。

また隣地が所有者不明土地であることで起きていた、隣地使用や竹木の枝の切除等のトラブルへの対応も視野に入れ、ルール作りのための改正も行われます。

今後、所有者不明土地の発生を予防する対策と併せて、問題の解消に向けて取り組みが進んでいくことになります。

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