重要事項説明のはなし③~賃貸借契約編(後編)~

不動産/建築用語

賃貸借契約における重要事項説明の後編です。

前編では『物件の概要』についてお話しています。後編では『取引条件』部分についてみていきたいと思います。

賃貸借契約編【前編】をご覧になりたい方はこちらからご覧ください↓

2.取引条件

取引条件に関する項目では、契約金や退去時の精算等の金銭に関することや解約予告期間、更新について、特約等この契約の条件などの内容が書かれています。

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…賃料、契約金の内訳の他、契約期間、更新や解除について等、契約条件についての記載。

…敷金の精算について、損害賠償責任、契約にあたっての必要書類や更新時の手数料、退去時の精算等についての記載。

注目点・5

下記の項目の詳細は裏面の『契約書条文抜粋』部分に書かれています。

  • 敷金について…第4条
  • 契約解除と損害賠償について…解約⇒第8条、第9条 損害賠償⇒第11条
  • 供託所について…右側のページの真ん中あたり【供託所に関する説明】部分
大幸住宅㈱重要事項説明書(裏面)*画像をクリックすると拡大します

退去後の原状回復について、これまで民法では『原状に復して』と簡単に書かれていました。2020年4月の民法改正により、借主の原状回復義務とその範囲を明確に定められました。(民法 第621条)

ポイントは下記の2点です。

  • 通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗や経年劣化は借り主に請求できない
  • 借り主の責めに帰することが出来ない事由による損傷の修繕費は借り主に請求できない

原状回復の具体例
法務省パンフレット『賃貸借契約に関するルールの見直し

上の図のうち、上段に書かれている例(床やカーペットの家具の設置後、電気ヤケ、地震で破損したガラス)は通常損耗(生活するうえで仕方のない汚れや磨耗)や経年変化(年月による劣化)にあたり、借主は修繕義務を負いません。

反対に下段に書かれている例(引越時のひっかきキズや用法違反による破損、タバコのヤニ汚れ、ペットなどによる毀損)は、通常損耗、経年変化に該当せず*入居者が『汚した』『傷つけた』という扱いになります借主は修繕義務を負います。

また、借主が通常の清掃を行っている場合、原則としてクリーニング費用は貸主負担です。借り主が負担する場合は特約等で規定する必要があります

…特約がある場合はここに書かれます。

注目点・6

そもそも特約とは、当事者間で取り交わす特別の条件を付けた契約を言います。

賃貸借契約における特約は、主に一般的な契約とは異なる内容や、契約条項の+αとして付帯する内容等が書かれています。

ただし、強行規定(法令によって当事者の合意如何に関わらず適用される規定)に反するような内容の規定は、双方の合意があったとしても無効になります

無効となる特約3例:

  • 『貸主の要求があれば直ちに明け渡す』
  • 『賃借人が差押え、又は破産宣告の申し立てを受けた場合に、貸主は直ちに契約を解除することが出来る』 等

重要事項説明書の作成も、重要事項の説明も媒介した不動産会社が行います。契約ごとに貸主が重要事項説明書を見ることはないでしょう。

重要事項説明で説明する内容は、法律の改正などにより変更していきます。法律の改正は大きな事件や災害等がきっかけで行われることもあります。また、特約等で明記していなかったことで貸主と借主の意思疎通がうまく行われず、トラブルになるケースもあります。

賃貸経営を行っていくに当たり、無用なトラブルを避ける為に、また経営者として自分の商品が契約時にどんな説明をされているのか知っておく為にも、どういった内容の説明を行っているのか知るのはとても大切です。

貸主と借主がお互い安心して賃貸借契約を行えるよう、仲介業者に任せきりではなく、法改正等、定期的に業者と打ち合わせ等を行い、説明内容をしっかり把握しておきましょう。

このジャンルは、商品力に直結する仲介業者にしかできないリーガルチェックと言えるかもしれません。

売買契約の重要事項説明についてこちらで書いています↓

分譲マンション等の契約の際の重要事項説明について書いています↓

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