『開業届』のはなし

不動産/建築用語

分譲マンションやアパート、マンション等を購入し、大家さんとして不動産経営を始める際は、新しく事業を始めることになり、開業届の提出が必要です。

この開業届とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

今回はこの開業届についてお話ししたいと思います。

開業届とは何か?

開業届とは国に対して「事業を始めましたよ」ということを知らせる為の書類です。正式には『個人事業の開業・廃業等届出書』という名前で、新たに事業を開始した時や事業用の事務所を新設、増設したときに提出します。

*書類の名前にもあるように、開業、事務所の新設のほかに、事務所の廃止、事業の廃止の時にも提出します

所得税法では、『事業所得、不動産所得、山林所得が発生するような事業を開始した人は、開始した日から1か月以内に開業届を出すこと』と定められています。所得税法 第229条『開業等の届出』)

事業所得、不動産所得、山林所得とは
  • 事業所得農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(このとき、山林所得又は譲渡所得に該当するものを除外します)をいう。(所得税法第27条)
  • 不動産所得不動産、不動産の上に存する権利(地上権又は永小作権の設、定その他、他人に不動産等を使用させることを含む。)船舶又は航空機の貸付けによる所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
  • 山林所得所有期間が5年を超える山林の立木を伐採、又は立木のまま販売して得た所得をいう。*所有期間が5年以下の場合、事業所得又は譲渡所得になります

*事業の大きさに関係なく、反復継続して上記3つのうちのどれかの収入が入るような事業を始めた場合は、開業届が必要になります。不動産収入の場合だと、何棟も所有していても、分譲マンションの1~2室だけでも、また、本業は会社員で副業で賃貸経営をする方でも、どの場合でも開業届は必要です

参考:国税庁HP『個人事業の開業届・廃業届等手続き

【書類の取得先】…書類は最寄りの税務署の窓口、又は国税庁のHPからダウンロードすることができます。

【書類の提出先】…納税地を所轄する税務署

*直接税務署の窓口へ持っていくほか郵送等の受け付けもできます。提出の際には、マイナンバーカード等の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要です

税務署だけでなく各都道府県税事務所にも開業の届出が必要です。この書類を事業開始等申告書と言います。

事業開始等申告書

事業を始めたことを都道府県に申告する為の書類です。各都道府県によって書式や提出先、提出期限に違いがあるので、注意が必要です。

書類の取得先】…東京都の場合、東京都主税局のHPからダウンロードすることが出来ます。

書類の提出先】…東京都の場合、開業から15日以内に所轄の都税事務所へ提出します。

参考:東京都主税局HP『事業を始めたとき・廃止したとき

何故それぞれに開業届が必要なの?

都道府県の税事務所と税務署の両方に開業届が必要なのは何故でしょうか?

理由は税金の種類とその管轄の違いです。

個人事業主にかかる税金のうち、代表的なものに所得税個人事業税があります。所得税は国税、個人事業税は地方税になり、国税は税務署、地方税は都道府県税事務所と管轄が違う為、両方に提出が必要になります。

その他、開業時に必要な届出書類いろいろ

所得税の青色申告承認請求書

確定申告を青色申告で行う場合、事前に届け出が必要になります。

*青色申告ができるのは、事業所得、不動産所得、山林所得の3種類の所得です

書類の取得先】 書類は最寄りの税務署の窓口、又は国税庁のHPからダウンロードすることができます。

提出期間】…青色申告書で確定申告をしようとする年の3月15日までに納税地を管轄する税務署へ提出します。

例:2022年の所得を青色申告しようとするときは、2022年の3月15日までに書類を提出します

参考:国税庁『所得税の青色申告承認申請手続き

その年の1月16日以降に新たに事業を始めたり、不動産の貸し付けを始めた場合は、その事業の開始の日から2ヶ月以内に手続きが必要です。*手続きをしない場合は、白色申告になります。

青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告している個人事業主が専従者(家族等)に支払う給与についての届出書です。

事前に手続きをしておくことで、専従者へ支払った給与の全額を経費とすることが出来ます。

提出期限

  • 1月15日迄に事業を開始した人はその年の3月15日迄
  • 1月16日以降に事業を開始した人は開業後2カ月以内
参考:国税庁HP『青色事業専従者給与に関する届出手続き
*画像をクリックすると大きくなります
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

青色事業専従者を含む従業員を雇用して源泉徴収を行う際に提出する届出書です。

提出期限

・従業員を雇用することになってから1カ月以内

参考:国税庁HP『給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
*画像をクリックすると大きくなります

不動産経営を相続したら?

個人事業主が亡くなり、相続人がその事業を引き継ぐときは、上記の『 個人事業の開業・廃業等届出書』で被相続人の廃業手続きを行い、新たに事業を引き継ぐ相続人が開業手続きを行うことになります。

青色申告も同様です。今迄青色申告をしていても、その効力は相続人にまでは引き継がれません。相続人がもともと青色申告をしていた場合を除き、青色申告を行う場合には新たに青色申告承認申請書の提出が必要です。

開業届は新規開業と同様、開業した日から1ヶ月以内に書類を提出します。青色申告承認請求書は被相続人の亡くなった時期によって書類の提出期限が異なるので、注意が必要です。

相続の場合の青色申告承認請求書の提出時期

開業届を出していなかったら?

もしも開業届を出さないまま事業を行っていたり、タイミングを逃してしまい、1カ月以内の提出が出来なかった場合でも、罰則等は無い為、気づいた時点で提出すれば受付してもらえます。

*提出していなくても罰則はありませんが、開業届の提出は任意ではなく義務の為、提出は必要です

上記のように開業届を提出していなかったとしても、何か罰則が科せられることはありません。ただし、補助金や助成金を受けるには個人事業主であることが必要です。

また、家主様の場合、家賃収入は不動産所得ですので、青色申告ができ、税金面で有利になります。

何より、罰則がないとはいえ、事業を行っている以上、開業届は『提出していて当然』という考え方であることは承知しておいた方が良いでしょう。

下記のサイトもご覧ください↓

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