『意思表示』のはなし

不動産/建築用語

日用品や食料品の購入、部屋を借りたり、家や土地を売ったり、買ったり等、これらはすべて契約にあてはまります。日々の生活の中で、私たちは様々な契約を結んでいます。

契約とは、簡単に言うと約束のこと。但し、法的に拘束力のある約束を指しています。
『買いたい』という買手の意思と、『売りたい』という売手の意思が合致することで、契約は成立します。
この自分の意思を表すことを意思表示と言います。

意思表示とは

意思表示』の意味を辞書で引くと下記のように説明されています。

契約の申込・解除や遺産相続など、権利・義務についての法的効果を生じさせるために、なんらかの方法で外部に本人の意思を表明すること

新明解国語辞典 第七版

上記のように、ただ自分の考えを表すのではなく、法律効果を発生させるために自分の考えを外部へ表すことが意思表示です。

法律行為が成立するために意思表示は不可欠な要素です。意思表示の段階で、勘違いや言い間違い等によって当事者の真意と表示された意思が食い違うことがあります。
このため民法では意思表示に関する条文を複数設け、無効になったり、取消しが出来る等の規定を設けています

意思表示には単独で効果を生ずる場合と、他者の意思表示と合致して効果を生ずる場合との2種類があります。

例1:単独で効果を生ずる場合 

相手の承諾を必要とせず、ある人の一方的な意思表示で成立する法律行為を単独行為と言います。
単独行為には、だれか特定の人に向かって行うもの(相手方のある単独行為 → 契約の解除、取消し等)と、相手を特定する必要のないもの(相手方の無い単独行為 → 遺言、寄付等)の2種類があります。

相手のある単独行為…例えば解除の場合、解除権を持っている人が解除の意思表示をするだけでよく、相手の意思表示と合致する必要はありません
相手の無い単独行為…代表的な例が遺言です。遺言の『私の死後、財産は誰々に引き継ぎます』という意思表示は、相手方があるようにも見えますが、実は特定の人にではなく、世の中全体に自分の意思を示していることになり、相手の無い単独行為と言えます

例2:他者との意思が合致して成立する場合
買手は『代金と引き換えにリンゴを買います』という意思を売手に表明し、売手は買手に対し『代金○○円でリンゴを売ります』と意思を表明します。

右図のように売手と買手はそれぞれ
・リンゴを売る
・リンゴを買う
という意思を表示し、当事者双方の意思が合致すると契約が成立します。(これを諾成契約といいます)

*意思表示の方法は決まっておらず、それぞれ任意の方法で行います

不動産取引における『意思表示』

売買、賃貸借の不動産取引では、気に入った土地や家、部屋等に対し、買主や借主は『申込書』を提出します。
申込書は、『買います』(又は『借ります』)という意思を表明しているので、意思表示と受け取られがちですが、この場合、意思表示ではなく売主(又は貸主)との間で、契約に向かって条件などを決めるための交渉権の確保が目的であると考えられています。その為、この申込書に対し売主(又は貸主)が契約を承諾したとしても、契約成立とみなされないのが一般的です。

更に、宅建業者が仲介をしている場合には、金額や引渡しについて等、所定の事項を記載した契約書(37条書面)の交付を義務付けています。
つまり後々正式な契約書を作成することが予定されているので、申込書は契約書の取り交しの前の段階で、双方の購入意思と売却意思を明確にし、売買(賃貸)の交渉をスムーズにするためのものとして扱われています。

*但し、交渉中であっても相手に契約の成立に対し強い信頼を与え、その結果相手が費用の支出などを行っていた場合には、その費用を賠償する責任を負うことがあります

意思表示の『到達』について

意思表示は、いつ効果を発揮するのでしょうか。
民法では原則として『意思表示の通知が相手に到達したときに効力を発揮する』と規定しています。(民法第97条1項)

ここでいう到達とは、一般取引上の通念で相手方が知ることができる状態になることであり、相手が実際に知ったか、通知を見たかということまでは必要ないとされています。
具体的な例をあげると、郵便物が郵便受けに投函された、又は親類が本人の代わりに受領した等という場合でも『到達した』とみなされます。

相手が受け取らなかったら?

2020年の民法改正で第97条2項が新設され意思表示の到達が妨げられた場合の「みなし到達」について規定されました。

相手方が正当な理由なく、意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであったときに到達したものとみなす
例えば…家賃を滞納している賃借人が貸主からの催促の書面が配達されてきたのを受け取り拒否したとします。このような場合、配達された時点で到達したものとみなされます。

2020年の民法改正では債権法、相続法をはじめ様々な部分で大きく改正となりました。その中で意思表示については改正部分もあったものの、それまでの一般的な考え方や、判例などで『こうだろう』とされていた内容を明文化したものがほとんどで、実務上の変更はさほどないとされています。

とはいえ、まだ改正したばかりの為、具体的な対応はこれからの裁判例をみながらになると考えられます。
ご不明点などがありましたら、専門家に相談することをおすすめします。

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