賃貸住宅を建築する時の注意点

どんな事に注意をするべきなのか？

- 建築業者は、建築の専門家です。当然、建築の事は詳しくて当たり前です。さらに、建築費に関しても詳しくて当たり前です。しかし、賃貸仲介における「入居者に好まれる間取り・外観・設備・共用部分等」「賃料査定」は建築業者はできず、地場の仲介業者に聞いてまわっているのが現状です。
  つまり、不動産業者からヒアリングした情報をまとめて設計図や事業計画に落とし込んでいると言っても良いでしょう。では、そのヒアリング情報が劣化した情報だったり、間違った情報だった場合はどうなるのでしょうか？
  そのままその劣化情報・誤情報が設計図や事業計画に落とし込まれます。
賃貸共同住宅は、施主が自ら住む家と違い、事業用の商品であり、その企画設計によって数十年に渡り収益を生み続ける資産です。そのような長期保有を前提とした資産を企画設計する時には、以下の点を考えるべきです。
1. 長期に渡り、商品力を維持できる間取り、設備、共用部か？
2. 万一、市場動向や経済状況が激変した際の策はあるか？
3. 万一、売却しなければいけなくなった時、売却しやすい物件になるか？
4. 相続が発生した時、相続しやすい状態に加工されているか？
5. 金融機関の評価が得られる投資用物件になっているか？
6. 市場調査、人口動態、地域傾向を検討し、設計に反映しているか？
7. ターゲットとなる客層の好み、購買心理は把握しているか？
8. 必要最低限の設備は整っているか？華美な設備は削っているか？
9. 経済設計になっているか？（設計効率が悪いと施工費用も高くなる）
10. 入居者入れ替えの際の修繕リフォームが実行しやすいか？
11. 長期修繕関係のリフォームが実行しやすいか？
12. メンテナンス性は高いか？メンテナンスフリーに近いか？
  清潔に保ちやすいか？正常に保ちやすいか？雨水に強いか？
13. 事業計画、予想収支等の数字に裏付けがあるか？信憑性があるか？
等々、少し考えただけでも様々な要点があり、お客様の不安のすべてに対して、納得できるような答えが導き出せる建築業者が、良い業者と言えるのではないでしょうか？
そのためには、地域特性を熟知し、賃貸市場とその展望を分析でき、売却や相続を前提とした資産整理にも長じ、融資に強く、法務や登記関係の知識もあり、経済設計とメンテナンス性と賃貸物件価値をうまくバランスさせる事ができる業者であるべきではないでしょうか？
事業である以上、コストを抑えたいと思うのは当然ですが、コストを削る過程において、賃貸住宅にとって重要で必要な要素を削ってしまっては、賃料帯・入居率・賃料維持率といったパフォーマンスを著しく減じる事にもなりかねません。
融資を使うか否かでも設計に影響を与えます。
金融機関は、建築物を返済の資力とみなすため、世帯数が多く、常に安定した収入が得られる事を望みます。しかし、戸数が多くなればなるほど、一戸当たりの面積が狭くなってしまうので、長期入居率を考えた場合、注意しなければなりません。
土地の力を最大限に生かす設計「最大限設計」とは、建蔽率と容積率をはじめとした各種法令制限の範囲内で最大限の賃貸用有効面積（レンタブル面積）を確保する設計の事です。
- 「経済設計」とは、建築費用の坪単価を最小化するための設計思想です。「経済設計」の思想には、以下の要素があります。
  1. できるだけ材料を無駄にしない。（木造の910モジュール等、基本モジュールから外れない）
  2. できるだけ工場既製品を使う。（カスタマイズすると、例え小さくても費用が増加する）
  3. できるだけ設備を少なくし、配線や配管等も考え、効率よく配置する。
  4. 総2階や総3階にする。平面形状の四角形で凹凸の少ない外壁線にする。（構造強度上も有利になり、雨水浸入率も減少）
つまり「経済設計」を突き詰めると、同じ仕様であれば一戸建が一番安くなります。
同施工床面積の建物同士を比べると、同じ仕様で有れば、世帯数が少ない方が建築坪単価は安くなり、世帯数が多くなれば建築坪単価は高くなります。
同仕様、同世帯数で比べると、建物が大きくなればなるほど建築坪単価は安くなります。
では「最大限設計」の建築坪単価はどうなるか？もちろん建築坪単価は高くなりますが、土地形状、土地面積、道路付き等により高くなる比率は変化します。
では「最大限設計」と「経済設計」のどちらが良いのか？それも上述通り、土地形状、土地面積、道路付き等により変化する事に加え、お施主様の不動産投資や不動産経営に対する姿勢によっても変化していきます。
また、ここでは設計による、建築費用、建築坪単価の変化について述べましたが、「どれだけの賃料が取れるのか？」という命題に関しては、さらに「間取り設計」と「仕様」「賃貸市場の動向」等の要素が加わり変化していきます。
投資効率だけを考え「総賃料 ÷ 総建築費用の最大化」を目指すと、必然的にできるだけ「世帯数は多く」しなければならないという結論になります。
そこでは、長期空室率、賃料下落率、客質変化、市場動向、将来経済予測、需給バランス等の議論が何もなされてません。2013年現在の現状を見ると、バブル時に大量供給された専有面積の小さい賃貸物件において、賃料下落や空室率上昇、滞納率上昇などを招いており、不動産経営が困難になっています。
また、東京都内では各行政の相次ぐ「通称ワンルーム条例の施行」により、中規模以上の賃貸住宅（概ね3階建以上で総戸数10戸以上※）では、１住戸あたりの専有面積が軒並み25m²以上になっており、これからも25～35m²の物件が大量に供給されていくと予想されます。
つまり、何世帯にするのか選択肢がある計画であれば、まず賃貸市場動向と経済予測をからめ、どこの客層をターゲットにするかという方針を決めることによって、世帯数と専有面積を決定していく事になります。
※ 行政により基準が異なります。

賃貸住宅を建築する時に注意すべき事は何でしょうか？｜不動産のマメ知識

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