『定期借家契約』のはなし(前編)

不動産/建築関連用語
不動産/建築関連用語

賃貸住宅の契約方法には、普通借家契約と定期借家契約の2種類があります。
一般的な契約方法は普通借家契約と呼ばれる契約方法で、特に住居の賃貸借契約の大半がこの普通借家契約で締結されています。
もう一方が定期借家契約と呼ばれる契約方法です。こちらはどのような契約で、普通借家契約とはどのような違いがあるのでしょうか。

定期借家契約とは何か?

定期借家契約とは、更新が無く、定められた期間の満了とともに契約がそこで終了する借家契約の事をいいます。
但し、貸主、借主双方の合意があれば、再契約することが可能です。
原則として中途解約はできませんが、殆どの契約では特約で借主からの中途解約について定めています。
中途解約についての特約がある場合は、その内容に従います。
*床面積が200㎡未満の住宅に居住している場合、結婚、介護、療養等、やむを得ない事情で建物の使用が困難となったときには、特約が無くても解約することができます

定期借家契約のポイント
  • 契約期間を定めたうえで、書面で契約をすること
  • 契約書とは別に、この契約が定期借家契約であること、更新がなく期間の満了で契約が終了すると記載された書面を交付し、説明すること
    *期間が1年以上の契約を結んだ場合、契約終了の1年前~6か月前までに借主へ契約終了の通知を送る必要があります

定期借家制度はなぜつくられたのか

定期借家契約は1999年12月に成立した『良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法』により創立した制度で、2000年3月に施行されました。

それまで賃貸借契約の形式は普通借家契約の一種類でした。この契約形態は借主保護の側面が強く、一度賃貸借契約を結ぶと継続が原則で正当事由が認められなければ貸主は更新を拒絶することが出来ません。
その結果、賃貸住宅市場にある住宅は回転の速い狭くて小さな住宅に偏り、空き家を持つオーナーは、空いている家があっても借家にせずそのままにしておくことも多く、住宅の有効活用が出来ていないという実態がありました。

国土交通省HP『定期賃貸借契約』よりパンフレット

定期借家契約制度の導入により、短期間の契約が可能になること、また契約終了の時期が確定することで、大規模修繕や建替え等が行いやすくなり、空家の活用や入居者に良質な住宅を提供しやすくなります。
さらに、定期借家契約が普及すると、広さや種類等さまざまな住宅が供給されるようになり、貸主は資産の有効活用が、借主は自身のライフステージに応じた住宅利用の選択肢が増えることが期待され、制度が創設されました。

定期借家契約は普及している?

制度が始まってから20年以上が経ちますが、現状定期借家契約は普及しているとは言い難い状況です。
下図を見てもわかりますが、一般的に普及している契約方法は普通借家契約が殆どで、定期借家契約は認知度も低く、大半の人が『知らない』又は『聞いたことはあるけれど、よくわからない』という調査結果が出ています。

普通借家契約との違い

普通借家契約とは、賃貸物件で一般的に使われている契約方法です。一年以上の契約期間が定められており、更新が可能です。
借主が引き続き使い続けることを表明している場合、正当事由が無ければ貸主からの更新拒絶や中途解約はできません。
*契約期間を1年未満とした場合、期間の定めのない賃貸借契約とみなされます。その為、一年以上の契約期間を定めることがほとんどです

国土交通省 パンフレット『定期借家契約をご存じですか

更新拒絶や、立退きを要求する場合は、老朽化におよる建物の取壊しや貸主がその物件を自ら使用しなければならない事情がある等の正当事由が必要になります。

正当事由とはどんな事由?

貸主側に正当事由が認められやすいのは以下のような事由があるときです。

1.貸主自身に物件を使用する理由が生じた場合…貸主本人が『そこに住むしかない』というような場合
2.建物の賃貸借に関する従前の経過 …建物を取り壊して建て直す具体的な計画がある等の借家関係の事情、賃料額、当事者間の信頼関係等(賃料滞納の常習化、無断転貸、何度も警察が来るなどの素行不良)というような場合
3.建物の利用状況…賃借人が契約の利用目的に従って使用しているか
4.建物の現況…建物自体の物理的状況(建物が老朽化している、社会的・経済的効力を失っている等)
5.財産上の給付…明け渡しの条件、又は明け渡しと引き替えに立退料または代替え建物の提供
がある場合

 

正当事由が認められるのはなかなか難しく、正当事由を満たすために、ほとんどの場合は立退料を支払うことになります。

但し、『立退料を払えば必ず立ち退いてもらえるかというとそうではない』ということ。
賃貸借契約において、借主は居住場所や営業の場所として物件を利用しているケースが多く、貸主から一方的に更新を拒否されると大きな不利益を被る可能性が高いと考えられます。
その為、借主は借地借家法によって強く保護されており、上記のような理由があり立退料を払うといっても、更新拒絶や立退きにならないケースもあります。更に、立退き交渉は揉めるケースも多く、大変難しいものになります。

『定期借家契約のはなし(前編)』では定期借家契約とは何か、制度の成立ち、普通借家契約との違い等についてお話ししました。
後編では定期借家制度のメリットやデメリット、代表的なトラブル例についてお話ししたいと思います。

『定期借家契約のはなし(後編)』はこちらからどうぞ↓

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