貸し手市場から借り手市場

少子高齢化が進む中、現在、不動産の賃貸市場は「貸し手市場」から「借り手市場」へと移り変わってきています。

かつては、「ベビーブーム」と「高度経済成長」によって都市部への人口集中により、深刻な住宅不足になり住宅の需要に供給が追い付かない状況でした。

バブル崩壊後、賃貸管理業へと進出する不動産業者が増え、
建設会社・ハウスメーカー・地元工務店による賃貸マンション・アパートの建築着工数も
増加していきましたが、それでも賃貸物件の需要は圧倒的に高く、
転居シーズンの3月ごろになると、借りられる物件がないという状況になることもありました。

しかし、少子化の波が押し寄せ始めると、新社会人・新入生となる人数が年々減少し、
じわじわと賃貸物件の需要も減り始めていきました。
既存の賃貸物件で徐々に空室が発生し始め、そうした状況でも新規物件の建築着工が続き、物件が余ってしまうようになりました。

入居率の低下に伴い、賃貸人の立場としては、空室にしておくよりは賃料を値下げしたり、初期費用を安くしたりしてでも、空室を埋めた方が良いという考え方へと変わっていきました。
新築の賃貸マンション・アパートは、その時点での設備や間取りのトレンドを取り入れているため、入居者が決まりやすいですが、その一方、築年数が経過している物件では設備や間取りが入居者ニーズに合わなくなり、リフォームや、賃料値下げなど賃貸条件を見直さないと入居者が決まりにくくなりました。

また、お部屋探しの手段についても現在は大きく変化しています。
かつては、情報誌等の紙媒体が主流で、間取り図と文字情報を頼りに不動産会社を訪問して物件の内見をしていました。しかし、現在ではインターネット広告が主流となり、物件の外観写真、室内写真、周辺施設をスマートフォンやパソコンで手軽に見られるので、ある程度の物件情報をもって内見することができるようになりました。

インターネットで閲覧している段階で興味を持ってもらえないとなかなかお問い合わせに繋がらず、そもそもニーズに合わない物件に関しては目に留まる事すらありません。
こうした点も、借り手市場に移り変わっている要因の一つと考えられます。

賃貸物件の供給数が少なかった時代は「大家さんから物件をお借りしている」という意識が強く、貸し手市場でしたが、現在は人口の減少と賃貸物件の供給過多に加えて、インターネットで様々な情報を入手できる状況であり、「少しでも好条件の物件を吟味したい入居希望者に、物件を選んでいただく」という借り手市場になってきています。