相続のための節税対策

相続税評価額(不動産)とは

相続税評価額とは、国税である相続税を計算するための元となる価額で、様々な種類の物品毎に評価方法が定められています。

現金や借入金(マイナスの現金)は、数字の額面通りの評価をされます。つまり、1,000万円の現金の相続評価額は「1,000万円」であり、1,000万円の借入金残高の相続税評価額は「-1,000万円」となります。

では、3,000万円で購入した土地の相続税評価はどうなるでしょうか?
それは、前面道路に付される路線価や土地形状と大きさを考慮した評価方法によって計算されます。
整形地による比較をすると、東京23区内での路線価は、時価額を大きく下回ります。つまり、東京23区では、3,000万円で購入した土地の相続税評価額は、1,500万~2,000万円になることもあります。

では、2,000万円で購入した建物の相続税評価額はどうなるでしょうか?
それは、固定資産税評価額をそのまま相続税評価額のベースとして流用します。つまり、再調達価額2,000万円の建物の相続税評価額は、新築直後でも、いきなり1,000万円程度になる事もあります。
もちろん、建物は劣化しますので、築30年の木造建物は、新築時の2~3割以下に固定資産税評価額も下がります。

こうした不動産の相続税評価額の性質を良く理解し、資産構成を組み換える事で、相続税評価額を大幅に下げる事が可能です。

「税金を節約しようだなんて、国に対する背任ではないのか?」と思われる方もいらっしゃいますが、私たちは「自らの資産を高度利用し、経済に貢献する者は、税制優遇をする、という国の方針」と解釈できると考えております。

相続税評価額を下げる方法とその仕組み(不動産関連)

不動産の相続税評価額は、現金の相続税評価額よりも著しく低いことを説明しましたが、さらに下げる方法があります。しかし、「生兵法は大怪我のもと」と言いますので、各種専門家とよく相談して、自分の状況に合うかどうかの判断を慎重にしてください。

貸家付建付き地・貸家

俗に言う、賃貸用アパートや賃貸マンションの事です。賃貸用アパート等は、賃借人が住まう事により、借家権が発生し、自己利用が制限されていることから、

建物の相続税評価額から-30%
土地の相続税評価額から-30% × 借地権割合

が評価減されます。

つまり、1億円の現金を持っている方の相続税評価額は1億円、現金1億円+借入金1億円で新築賃貸アパートを購入された方の相続税評価額は、うまくすれば「5,000万円以下になる」という現象がおきます。

次に相続税評価額1億円(借地権割合70%)の土地を持っている方の場合はどうでしょう。
更地や駐車場として利用している場合、相続税評価額は1億円(評価変更なし)
1億円を借り入れて、1億円の賃貸用アパートを建てた場合、うまくすれば相続税評価額「3,000万円以下になる」ということです。

このような評価減の事例は、時価 > 公示価基準地価 > 路線価という図式が常に成り立つ都市部では一般的です。

では、都市部に不動産をお持ちでない方は、この手法は成立しないかというと、成立します。ただし、私どもではお勧めしておりません。
お勧めしない理由は、相続税評価額を下げる事だけが目的ではなく、賃貸用アパート等にて定期収入を得る事も目的であるからです。
将来にわたり、継続的に賃貸物件として需要が見込める地域でなければ、過度にこの手法に頼るべきではありません。

都市部の不動産をお持ちでない方には「買い換えによる資産の組み換え」を私共は提案しております。「資産の組み換え」においては、目的や投資方針によって様々な注意点があります。

養子縁組

特に、子供がなく、兄弟や甥姪がいる場合は、この制度が役に立つ場合があります。さらに、養子縁組の話を持ちかけられた場合の注意点として、負債と資産のバランスを確認しなければならないでしょう。

資産管理会社の設立

「資産管理会社設立」というと、良いイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、使い方によって毒にも薬にもなるのは他の制度と同様です。特に注意しなければならない事は、維持管理コストが発生するため、損益分岐点が存在するという事です。つまり、収益不動産の規模や家族のご事情によって、損得が分かれるという事です。

分筆

大きな土地に関して、「広大地の評価減」という相続税評価手法だけではなく、もっと積極的に節税したい方には「分筆」という手法があります。
ただ「分筆」だけによる相続税評価の減少を狙うというのはリスクが高く、あくまで「今後の利用形態に合わせて分筆する」「処分・納税・分割を見越して分筆する」という考え方のほうが無難です。
特に借入時、抵当権が及ぶ土地の範囲を限定したい時には必須の手法です。

資産の組み換え

世の中には「売るに売れない土地」「時価評価額がマイナスの土地」にもかかわらず、固定資産税評価額が付いて、税金を納めなければならないような土地があります。
特に都市部から離れれば離れるほど、そういった民間価格と公共価格との逆転現象は頻繁に見られる傾向を感じます。
また、都市部でも、時代の変化によって民間価格が大幅に変化したにもかかわらず、公共価格はあまり変動せず、固定資産税に苦しんでいる方もいます。

固定資産税で苦しむ方は、相続で負の資産を子孫に残す可能性があります。
例えば、度合いにもよりますが、再建築不可の土地、著しい既存不適格物件が建っている土地などです。以上のような場合に効果を発揮するのが「資産の組み換え」です。
「資産の組み換え」においては、目的や投資方針によって様々な注意点があります。

遺言

遺言は、分割対策のために必須ですが、節税、納税対策とも密接に関係しています。何のために節税対策と納税対策を行うのかというと、スムーズな分割対策のためでもあります。分割対策などの詳細に関しては「相続のための遺産分割対策」をご覧ください。
残すべき資産と、処分すべき資産を相続人に指示してあげるのも先人の役目ではないでしょうか?

相続 = 親の死

を推定相続人たちが話題にすることは、倫理的に抵抗感をお持ちの方々が大多数だと思います。それゆえ、不動産をはじめとする資産の評価や管理の知識経験の継承が上手くいっていないご家庭がほとんどです。
相続を機に、一から学びなおしている相続人が多いと思います。むしろ、長老格の方が次世代の方に積極的に情報開示、情報共有をしなければ、せっかくの知識経験の継承は実現できないでしょう。ただし、全ての相続人ではなく、一部の信頼できる方に限ってですが。