近年、空き家や所有者不明土地が全国的に増加し、問題となっています。
こうした問題を受け、利用の円滑化、今後の発生予防に向けた取り組み等、問題の解消に向けたアプローチが進んでいます。特に、所有者不明土地については、民法・不動産登記法の改正、更には新法の創設といった決定がなされ、話題となっています。
ところで、そもそも所有者不明土地とはどういったものなのでしょうか。
所有者不明土地とは何か
所有者不明土地とはどんな土地を指すのでしょうか。
2018年6月に施行された、『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』では以下のように定義されています。
相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により検索を行ってもなおその所有者の全部または一部を確知することができない一筆の土地をいう
『所有者不明土地の利用の円滑の円滑化等に関する特別措置法』第2条
具体的には下記のような土地を言います↓
実は、こうした土地は全国に多数あります。
2016年の地籍調査では登記簿上の20%が所有者不明土地となっており、その面積は九州本土がすっぽり入る約410万haとみられています。更にこのまま対策がなされなければ、2040年には北海道の面積に迫る約720万haになると推計されています。*北海道の面積は約830万ha
なぜ所有者がわからなくなってしまうのか?
土地所有者の所在や、生死の把握が難しくなる大きな要因の一つが相続登記の未登記の問題です。
土地や建物の所有者が亡くなると相続が行われ、相続人が新たな所有者となります。
この時新たな所有者は所有権移転登記を行います。
*但し、不動産登記は義務ではなく、任意の為、登記せずにそのままになっていることもしばしばあります
登記しないまま時間が経過し、世代交代が進んでいくと、法定相続人がどんどん増えていってしまいます。*1筆の土地に100人以上の法定相続人がいる事例も!!
人数が膨大になるとそれだけ所有者と連絡を取ったり、交渉が難航する原因となります。
所有者不明土地が増えることで起こる問題
所有者不明土地の問題が大きく話題になったのは、東日本大震災後の復興事業ではないでしょうか。所有者がわからない、所在を突き止めるのに時間がかかる等の理由で、復興事業のための用地取得が困難になっている、とニュースなどで話題になりましたね。
その他下記のような問題点が挙げられます。
対策として
年々増加傾向にある所有者不明の土地。
現在ある所有者不明土地を円滑に利用していく為、更に今後の発生を予防する為に、国は調査や検討を重ね制度を見直して、法の改正や特例の整備等を行っています。
2021年4月21日、参議院で「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が可決成立し、4月28日に公布されました。
法律の施行を2年以内、相続登記義務化は3年以内を目指し現在準備がすすめられています。
下記のサイトもご覧ください↓
- 国土交通省HP『所有者不明土地対策』:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000099.html
- 法務局HP『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について』:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000022.html
- 東京法務局HP『表題部所有者不明土地等の探索について』:http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000001_00011.html