構造計算のはなし

不動産/建築関連用語
不動産/建築関連用語

建物を建てる時に大切なのは何でしょうか?
見た目がおしゃれ、使いやすい、省エネ性能等、どれも大切ですが、何より安全であることが大切ではないでしょうか。

建物の安全性を確かめる手段として構造計算があります。
この構造計算とは、どのようなものでしょうか。

構造計算とは何か?

構造計算とは、建物の安全性を検討、確認する計算です。
建物には自身の重さや家具を設置した時の重さ、積雪の重さ、風の力、地震等様々な力が作用します。これらの力によって建物はどう変形し、どう応力が生まれるのか確認し、そうした力が加わっても安全であるように計算し、判定する、『建物の構造安全性について科学的に検証し、確認するための計算』です。

*構造計算は最終的に『構造計算書』としてまとめられますが、建物の種類によって数百枚の量になることもあります

どんな建物に必要か?

建築基準法では、構造計算の審査が必要とされている建物は以下のように規定されています。

構造計算が必要な建物
  1. 木造建築物で3階建以上のもの
  2. 木造建築物で延べ面積が500㎡を超えるもの
  3. 木造建築物で建物の高さが13mを超えるもの、または軒の高さが9mを超えるもの
  4. 木造以外の建築物で2階建以上のもの、または延べ面積が200㎡を超えるもの
  5. 主要構造部(柱・梁・壁等)を石造、レンガ造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造等にした建築物で、高さが13mを超えるもの、または軒の高さが9mを超えるもの

構造計算の種類

法律で定められている構造計算には、大きく分けて4つの種類があります。

1.許容応力度計算(ルート1)

建築物にかかるすべての荷重を想定し、それらの荷重に対する応力(部材等の内部に生じる抵抗力のこと)を算出して、それぞれの部材がそこにかかる応力に耐えられるかどうかを許容応力度(耐えられる限界点)と比較する計算です。

荷重計算

その建物の全ての重さや係る力を計算すること。
荷重の種類には以下のようなものがあります↓

荷重計算の内容
  • 建物の重さ
  • 建物の床に乗せる家具等、物の重さ(積載荷重
  • 雪が積もった時の屋根に係る重さ(積雪荷重
  • ピアノや太陽光パネル等、特に重いものの重さ(特殊荷重
  • 地震が来た時にかかる力(地震力)を建物の重さから算定する→地震の時にかかる力は重いものほど大きくなります
  • 強風の時に風によって建物にかかる力を算定する(風圧力
応力度の計算

建物の各部材にかかる力とその応力を計算します。
→柱や梁、壁の一つ一つにどのくらいの力が作用するのかがわかります

応力とは?

ある物質に外から力を加えた時に、変形したり壊れたりしないのは、その物質の内部に外力に抵抗する力が生じて釣り合っているからです。
この内部に発生する力を応力
部材の単位面積あたりに生じる応力を応力度といいます。

許容応力度の確認

コンクリートや鉄、木材等、建物に使用する材料にはそれぞれ応力に耐えられる限度があり、これを許容応力度と言います。各部材に生じる応力度が許容応力度を超えてしまうと、その部材は損傷します。
損傷した場合、より強い部材に取り換えて再度計算します。この工程を繰り返し、全ての部材に生じる応力度が許容応力度より小さくなるまで、つまり損傷しなくなるまで計算します。
この計算が許容応力度計算です。*建築基準法施行令第82条に規定

2.許容応力度等計算(ルート2)

許容応力度計算に加えて、層間変形角、剛性率、偏心率等の計算を組み合わせたもの。

層間変形角

層間変形角とは建物の変形のことを言います。
この変形の度合いが許容の範囲内かどうかを確認します。

剛性率

建物の各階毎の変形しづらさを比べて、そのバランスが良いかどうかを表す指標です。

偏心率

建物の重心(質量の中心)と剛心(地震などに耐えようとする強さの中心点)のズレを表す指標です。

*建築基準法施行令第82条の6に規定

3.保有水平耐力計算(ルート3)

地震力や風圧力等の力を受けて、建物が瞬間的に大きく傾いたときに、どこまで倒れずに耐えることが出来るかを確認する計算。
*建築基準法施行令第82条~同条4に規定

4.その他(限界耐力計算、時刻歴応答解析)

特殊な建築物に利用されるケースが多いので、ここでは省略します。

因みに…

建築物の構造計算を行い、建物の基礎や骨組みを設計することを構造設計と言います。
建築基準法では、建物の構造は中地震時(震度5強程度)と大地震時(震度7程度)の2段階の地震力に対して設計することが義務付けられています。構造設計では、1次設計と2次設計と呼びます。

  • 一次設計…許容応力度計算を行う。構造計算を行う全ての建築物で行われる。
  • 二次設計…一次設計以外に必要となる計算を行う。*例えば、保有水平耐力計算など 規模の大きな建物や、複雑な形状の建物に必要になります。

四号建築物の特例

建築物を建築したり、大規模な修繕を行う際には、十分な耐震性があることを裏付ける為に構造計算が必要となります。但し、その建物が一定の条件を満たす建築物だった場合、建築確認の一部の審査を省略する等、簡略化することができます。四号特例

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国土交通省HP 『建築関係法の概要』より抜粋 *クリックすると拡大します


四号建築物で建築士が設計した場合には、建築確認時に構造計算書の提出が不要になります。
もちろん、構造関係等の審査が省略されるからと言って、構造の安全性を確認する必要がないわけでなく、守らなければならない仕様のルール仕様規定が決まっています。

四号建築物とは?

建築基準法第6条第1項第四号に規定されている建物で、まとめると下記のような建物です。

クリックすると拡大します↑

1.用途が原則、特殊建築物ではないこと*特殊建築物だった場合、200㎡以下であること
2.規模が以下のいずれかに該当すること

  • 木造建築物で階数2以下、延べ面積500㎡以下、最高高さ13m以下、軒高9m以下の全てを満たすこと
  • 木造以外の建築物で、階数1階、延べ面積200㎡以下の全てを満たすこと

上記1.2の項目に全て該当する建物が四号建築物に該当します。
*一般的な住宅(2階建ての木造住宅)の多くはこの四号建築物に該当します
*四号建築物以外の建物を建てる際には、構造計算が必要です

四号特例の問題点

一般的な戸建て住宅では、仕様規定を守って建てていれば構造の安全性は確保しているとみなされます。
しかし、一部で不適切な設計や工事監理が行われ、構造強度不足が明らかになる事案も発生しています。
加えて近年の急速な住宅の省エネ化、断熱性能の高性能化等により建物が重くなり、今までの壁量では足りず、地震による崩壊が懸念されていること、間取りのニーズの多様化で大空間を有する建物が増加し、地震や積雪時の倒壊リスクが高まっていることなどから、四号特例の廃止、又は範囲の縮小などが審議されています。

構造計算は建物の安全性を確認する重要な計算です。
だからこそ、建物を建てる時に、構造計算とはどういうものか、行う意味や必要性を知り、建築士等専門家の説明をきちんと理解することが大切ではないかと考えます。

下記のサイトもご覧ください↓

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