相続手続きの中で、相続人の特定業務は相続財産の確定と同じように時間と手間のかかる作業です。
相続人の確定は専ら戸籍の記載に基づいて行われるため、戸籍の内容がすべて書かれている戸籍謄本が必要不可欠ですが、そもそもこの戸籍とはどういったものなのでしょうか。
法務省のHPでは下記のように説明されています↓
戸籍とは、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍を公証する唯一の制度です。
法務省HPより
『戸』と呼ばれる家族集団単位ごとに家族の名前や本籍地、親族関係などを記した台帳が戸籍で、人が生まれてから亡くなるまでの身分や国籍などを証明してくれます。
戸籍のはじまり
いまから1300年ちょっと前、飛鳥時代の7世紀に作られた『庚牛年籍』(こうごのねんじゃく)が最古と言われています。
班田収授のための基本台帳として作られたとされていますが、9世紀に律令制が崩れると戸籍の作成もなくなりました。
その後安土桃山時代の太閤検地、江戸時代に幕府や社寺が作成した登録簿(人別帳、過去帳)等似たようなものはずっとあったものの、本格的な戸籍制度が開始されたのは明治5年に作られた『明治5年式戸籍』からです。
明治5年式戸籍はこの年の干支が壬申(じんしん/みずのえさる)だったことから壬申戸籍(じんしんこせき)とも呼ばれます。
その後『明治19年式戸籍』、『明治31年式戸籍』と法令などにより戸籍の様式が改められるたびに、戸籍を新しい様式に改める為の改製が行われました。
改製前の戸籍のことを『改製原戸籍』と呼びます。戸籍の改製は戦前に4回、戦後に2回の計6回行われており、したがって改製原戸籍も6種類あります。
現在取得できるもっとも古い改製原戸籍は『明治19年式戸籍』です。
戸籍に書かれていること
現在、戸籍を作ることができるのは日本人のみ。夫婦を基準としてその子供までがひとまとめとして記載されています。
- 本籍地…戸籍の所在場所を表すもの。戸籍に記載される人が任意に定める
- 筆頭者氏名…戸籍の一番初めに記載されている氏名。本籍地と合わせて一つの戸籍を特定する役目を持っています。結婚をすると夫婦の新しい戸籍が作られますが、この時夫婦が夫の姓を名乗るときは夫が、妻の姓を名乗るときは妻が戸籍筆頭者になります。
- 戸籍事項・戸籍編製…その戸籍作られた日やその理由。削除、改正、氏の変更等が記載されます。
- 戸籍に記載されている者 こちらをご覧ください→
さて、国籍や親類関係を証明してくれる戸籍。
相続手続き時には相続人を特定するために、亡くなった本人(被相続人)の家族関係を明らかにしなければならないので、必ず戸籍謄本を用意します。
*一番新しい戸籍謄本(亡くなったことが記載されている謄本)の他、生まれてから亡くなるまでの全ての謄本が必要になります。
対して、相続人は被相続人が亡くなった時に生きていることが確認できればいいので、謄本と抄本のどちらでも構いません。
戸籍謄本と戸籍抄本の違い
謄本・抄本が必要なのはどんな時か
- 公正証書遺言の作成時⇒謄本…遺産分割協議書作成時と同じ理由で、必ず謄本です。遺言を作成する方の相続人全員を特定する必要があるためです。
- 死亡保険金の請求⇒謄本 …保険会社によっては抄本でも構わないところもあります
- 婚姻届の提出⇒謄本/抄本どちらでも可…提出は謄本/抄本のどちらでもOKですが、例外的に自分の本籍地がある地域に婚姻届を提出する際は謄本も抄本も不要です。(役所に原本があるため、提出しなくても確認できるからです)
- パスポートの申請・更新時⇒謄本/抄本どちらでも可
その他、国家資格によっては登録時に謄本/抄本が必要になる場合もあります。(例えば医療従事者等の登録には戸籍謄本/抄本のどちらかが必要です)
*我々不動産業者が取得する資格『宅地建物取引士』の登録の際は謄本/抄本のどちらでもなく住民票の提出でした。国家資格でも資格によって違いがあるんですね。
戸籍謄本/抄本の取得は本籍地のある地域の役所で行うことができ、申請時には本人が確認できる証明書が必要になります。*役所での窓口は住民課・戸籍住民課・町民課等の名前になっている課の窓口で扱っていることが多いです。杉並区だと『区民課』です。
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