昨年(2020年)の12月に『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』の2大柱のうち、『サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置』が施行され、賃貸管理業務、サブリース契約についての注目が集まっています。
このサブリース契約とはいったいどのような契約をいうのでしょうか
サブリース契約とは何か
よくサブリースと言われている契約は実はマスターリース契約と、サブリース契約の2つの契約をひとまとめにしているものになります。
実際には、上図のようにオーナー様(貸主)とサブリース業者間で結ぶ賃貸借契約(マスターリース契約又はサブリース原賃貸借契約)とサブリース業者、入居者間で結ぶ転貸借契約(サブリース契約)の2つの契約に分かれています。
オーナー様とサブリース業者とが『この建物一棟を一括で○○円で貸し出します。第3者への転貸借を許可します』という条件のある賃貸借契約を結んだ、というとイメージがつかめるでしょうか。
マスターリース契約
賃貸物件を第3者へ転貸することを目的として建物オーナーから物件を借りること
*一棟を一括で借り上げるケースが多いようですが、必ずしも一括とは限りません。「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』では一括でないといけないとの規定はなく、『転貸借目的』で借りること、と書かれています(賃貸住宅管理業法第二条4項参考)
サブリース契約
オーナーから物件を借り上げた業者が第3者と転貸契約を結ぶこと
メリット
- サブリース業者はオーナー様から一括で賃貸物件を借り上げ、サブリース業者が賃貸人となり入居者の募集や管理などの運営業務を行います。
- 物件に空室がでたとしてもその都度賃料が上下することなく、オーナー様、サブリース業者間でその時決めてある賃料が入金されます。(実際には契約により様々な例外があります)
デメリット
- マスターリース契約での賃料は自主管理で借主と直接契約する時よりも低い金額になります。
- オーナー様側からサブリース業者へ契約解除または更新拒絶を申し入れる場合は、正当事由が求められます。(借地借家法第28条建物賃貸借契約の更新拒絶の要件より)簡単にはできないので、売却をする際には不利になる場合があります。
- サブリース業者がどんな入居者と転貸借契約を結んでいるのか把握できない場合があります。
注意点
・サブリース業者の経営破たん等により債務不履行になる場合がある
サブリース業者が倒産してしまい保証賃料が入らなくなるだけでなく、オーナー様が賃貸物件の管理業務や運営業務を急きょ行わなくてならなくなったという事例もあります。
・契約期間中、契約更新の際に賃料が減額になる可能性がある
近隣相場や経済状況、社会情勢によっては契約期間中や契約更新の際に賃料が減額になる可能性があります。
オーナー様とサブリース業者の間で結ばれる契約は、基本的に借地借家法に基づく契約です。借地借家法では借主に賃料増減請求権が認められています↓
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
借地借家法第三十二条
・原状回復費、大規模修繕費用などがかかることがある
修繕費、原状回復費は原則オーナー様の負担になるため、これらの出費があったり支払われる賃料から引かれる場合があります。また契約の内容によっては、ある程度の築年数が過ぎるとリフレッシュ工事又は大規模修繕が条件づけられている場合があります。
『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』の『サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置』では、契約内容に関わる重要事項説明書を契約締結前に行い、内容の精査ができるようになりました。
内容をよく読む、説明を受けて分かりにくいところがあれば遠慮なく質問する、不安が残るなら契約前に別の賃貸管理業者へ聞いてみる等の対応も有効だと思います。
サブリースだけでなく、管理会社の業務形態は様々。サブリースだけにとらわれずいろいろな管理形態を知り、良い点、悪い点を比べてみてもいいと思います。
そしてどういった管理形態を依頼するにしろ、ご自身がどんな契約を結ぶのかをきちんと把握し、理解することが一番大切なのではないでしょうか。
*ちなみに我々大幸グループにも管理部門があります。簡単にですが管理内容を説明していますので、ご覧ください↓
どんな業者を選んだとしても相手は賃貸経営のパートナー。お互いに信頼し合い、良いパートナーシップを築くことのできる業者を選びたいですね。
下記のサイトもご覧ください↓
国土交通省:賃貸住宅経営に関する注意喚起のパンフレット
オーナー様向け:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001373809.pdf
入居者向け:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001373811.pdf