不動産を所有するとき、賃貸経営をするとき、売却のとき等、賃貸経営に関わる不動産を取り巻く環境は様々な法律や条例等と関わっています。
どのような場面で、誰に対し、どういった法律と関わるのか考えてみたいと思います。
上図は賃貸経営に関わる不動産について一連の流れを大まかにイメージしたものです。簡単に言うと以下の3つの場面に分かれています。
- 相続や売買等で不動産を取得する
- 土地にアパートやマンション等を建築する
- 建てたり所有している建物を第三者に貸して賃貸経営をする 等
1~3のどの場面にも、それぞれに関わる法律があります。
不動産の取得と関係する法律
不動産運用のイメージ図の一番左側は不動産を取得する場面になります。この不動産取得の場面では、どのような法律が関わってくるのか考えてみたいと思います。
不動産は購入や、相続、贈与等で取得することになりますが、その際、主に左記の4つの法律が関わります。⇒
- 契約に関わる法律
- 相続に関わる法律
- 権利と登記に関わる法律
- 不動産会社に関わる法律
1.契約に関わる法律
不動産を購入する場合、売り主と買い主は売買契約を結びます。贈与を受けた場合も契約を結んだことになります。*民法上、贈与は契約の一種として捉えられ、『財産を無償で第三者に譲り渡す契約』として規定が定められています
契約の場面で基礎となる法律は民法です。契約の基本的な考え方(契約の成立要件、手付、契約不適合責任等)について書かれています。
契約内容について、当事者間での諍いや、取り決めされていない部分がある場合は、原則として民法に従います。
但し、事業者と一般消費者の契約の場合、情報量、交渉力等に差があるため、消費者に不利な取引とならないよう、消費者契約法等が定められています。また、取得した土地が一定面積以上の場合、届け出が必要になる事があります。(⇒国土利用計画法)
民法
所轄官庁:法務省
普段の生活上での基本的ルールとなる法律。*こちらから条文を見ることができます⇒ e-Gov法令検索『民法』
1.総則 2.物権 3.債権 4.親族 5.相続の5編にカテゴリ分けされ
- 取引がスムーズに進む為の取り決め
- トラブルが起きたときの判断基準
- 親族の範囲
- 誰かが亡くなった時にその財産をどうするのか
等、日常生活に関わる広い範囲における、基礎的なルールが定められています。
都市計画法
所轄官庁:国土交通省
無秩序な土地の開発を防ぎ、計画的な都市の開発を促すための法律。
国土利用計画法
所轄官庁:国土交通省
土地の大量買占め、乱開発による環境破壊等を防ぐために、土地の取引を監視したり、制限する法律。
*こちらから条文を見ることができます⇒ e-Gov法令検索『国土利用計画法』
消費者契約法
地方税法
所轄:総務省
都や県、市、区、等の地方自治体が課する税金を地方税といいます。この地方税について規定している法律。
*こちらから条文を見ることができます⇒e-Gov法令検索『地方税法』
地方税は、所得に対する税(所得課税)、消費に対する税(消費課税)資産に対する税(資産課税等)の三種類に分類することができます。
資産課税には、資産の取得や保有などに対する課税が分類され、課税の対象となるものによって税の名称が細分化されます。
例:
- 不動産取得税…不動産を購入・相続などで取得したとき、新築・増築した時にかかる税金
- 固定資産税…土地・家屋・償却資産を所有していることで課される税金
- 都市計画税等…市街化区域内に土地・建物を所有している人に課される税金
固定資産税について書いています。よろしければご覧ください⇒「税金のはなし~固定資産税~』
2.相続に関わる法律
誰かが亡くなった場合、亡くなった人の財産をどのように引き継ぐか、遺言書の作成はどのように行うのか等、相続にかかわる様々な事項は主に民法で定められています。
また、相続や贈与に係る税金は相続税法で定められています。
*相続税について書いています。よろしければご覧ください⇒『相続税のはなし』
所轄官庁:法務省
民法は大変量の多い法律です。*民法の条文数は、なんと1046条
このうち、相続については第5編にまとめられ、この部分は通称相続法と呼ばれます。相続法では、『相続人の範囲』、『相続の優先的順位』『相続人がいない場合』『遺言のやり方』等について定められています。
*4.親族と5.相続を合わせて『家族法』と呼ぶこともあります
相続税法
所轄官庁:国税庁
相続税及び贈与税について定めた法律。
*こちらから条文を見ることができます⇒e-Gov法令検索『相続税法』
納税義務者、課税財産の範囲、計算方法や申告方法、還付手続き等、納税が適正に行われる為に必要な事項等が定められています。
*相続税について書いています。よろしければご覧ください⇒『相続税のはなし』
3.権利と登記に関わる法律
不動産を取得した場合、入手した土地や建物が誰のものなのかはっきりさせる為に登記を行います。*取得の他、住宅ローン等融資を受けて取得した場合、抵当権の設定登記等の登記もあります(⇒不動産登記法)
登記について書いています、よろしければこちらもご覧ください↓
また、所有する不動産が分譲マンションなどの区分所有建物の場合の権利については、区分所有法等で定められています。
不動産登記法
所轄官庁:国土交通
不動産登記のルールを定めた法律。
*こちらから条文を見ることができます⇒e-Gov法令検索『不動産登記法』
どんな権利が登記の対象となるか、必要な書類と手続き方法、その他の登記について等が規定されています。
建物の区分所有等に関する法律
所轄省庁:法務省
分譲マンション等の区分所有建物の権利や、管理についての事柄等を定めた法律。
⇒e-Gov法令検索『建物の区分所有等に関する法律』
通称 区分所有法 マンション法
*民法の特別法という位置づけです
4.不動産会社に関わる法律
仲介等に携わる不動産業者に関わる法律です。
宅地建物取引業法
所轄官庁:国土交通省
宅地建物取引業の適正な運営と消費者保護を目的とする法律。通称 宅建業法
*こちらから条文を見ることができます⇒e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』
我々不動産業者が最も関わる法律のうちのひとつ。悪徳業者を規制し、反対に良質な不動産業者の信用を守り、お客様が安心して契約できるための環境をつくるための規定が定められています。*仲介手数料もここに規定されています
簡単ではありますが、購入、相続といった不動産の取得の場面に関わる主な法律を挙げてみました。
不動産の取得や運用等、取引の全ては様々な法律と密接に関わっています。思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、どんな法律があり、どんな意味があるのか、正しい知識を身につけたいですね。
下記のサイトもご覧ください↓
- 不動産ジャパンHP:https://www.fudousan.or.jp/
- 国土交通省HP『不動産業』:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000246.html
- e-GOV法令検索:https://elaws.e-gov.go.jp/
- 公益社団法人 全日本不動産協会HP:https://www.zennichi.or.jp/